「モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」」(相良敦子)書評・雑記
相良敦子『モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」』の書評メモ。
本の概要
将棋の藤井聡太さんが受けていたということで、最近ちょっと有名になった「モンテッソーリ教育」をベースにした育児書。
モンテッソーリはどういう考え方なのか、という話を一般向けに分かりやすく解説している。
全体の評価
☆☆★★★
理由:
①【良かったとこ】モンテッソーリの基本的な考え方がわかった
②【微妙なとこ】ちょっと時代が古い
③【微妙なとこ】体系的な話がない
①【良かったとこ】モンテッソーリの基本的な考え方がわかった
イタリアのマリア・モンテッソーリが、どういう経緯でこの教育法を編み出したのか。
モンテッソーリ教育では、子どもの自然な自主性を大切にするということ、そして具体的には、どういうシチュエーションで、子どもとどういう関りをもてばよいか。
本を通して、このあたりについては、非常に理解が深まったように思う。
特に、具体的な取り組み事例も載っているので、現場の人や実践したい人にとっては最適かもしれない。
②【微妙なとこ】ちょっと時代が古い
モンテッソーリが大切にしている考え方は分かったのだが、それが普通の教育とはどう違うのかが、イマイチ最後まで分からなかった。
比較の観点から、進学校や学習塾での学力観との対比はあるものの、この本の内容は25年前の話なので、その学力観の認識が今とはかなり違うように感じた。
例えば、今はゆとり教育を経て、生きる力や非認知能力みたいなものが割と重視される世の中になっているが(入試だってAO入試が4割の世の中だ)、本では、「進学校や学習塾は詰め込むだけの良くない教育です!」みたいな内容で、ハイパーメリトクラシー化している現代社会とは少し認識のずれがあるように思った。
しかも、今や詰め込み教育はモンテッソーリと比較しなくても、よくない教育だというのは皆わかっていることであって、そこに新しさを見いだせなかった。
あと、時代認識で言うと、オカンは子どもにじっくり手料理作るべきだ!みたいな記述もあって、ちょっとイラっとしてしまった。できるならみんなやっとるわ!というか。
本の中の古い常識(価値観)に、ちょっとイラっとしてしまう若い読者は多かろうと思った。
(端的に言うと、モンテッソーリでないものに対して、著者がちょっと説教くさいのよね…)
③【微妙なとこ】体系的な話がない
筆者の相良さんは、パリのカトリック大学でモンテッソーリを学び、九州大学教育学研究科を修了されているらしいので、学術的なバックグラウンドはある方なんだと思うのだが、意外に本には体系的な話が書いてなかった。
たぶん一般向けだからかな?
特に、脳科学に関する記述は結構あてにならないもので、ご自身もあとがきで「脳科学については素人で、誤った記述があった」ということは書いていらっしゃった。
だからこそなのか、モンテッソーリが宗教的なもののように感じてしまった。
データやエビデンスもなく、個々人の都合の良い事例を集めた宗教本のような感じというか。。
もう少し科学的に、体系的にモンテッソーリを知りたかったというのが残念なところだった。
まとめると
初心者で、まずはゆるく勉強したい、というモンテッソーリ教育者・親にはちょうどいいかも。
ただ、やや内容が古いので、もう少し現代社会に即した内容の本は他にあるような気もする。
◎名前を付けると
「モンテッソーリ教育の考え方をやさしく教えてくれるけど、ちょっと時代認識が古くて付いていけない人も多いかもしれない本」