「格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり」を読んで【書評・雑記】
千葉忠夫さんの著書「格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり」(PHP新書)の書評メモ。
本の概要
格差が小さく、世界一幸せな国と言われるデンマーク。
そんなデンマーク社会の教育と労働のお話が中心に書いてある本。
著者の千葉忠夫さんという方は、デンマークで学校を開いている方だそう。
全体の評価
☆☆☆★★
理由:
①【微妙なとこ】日本をディスりすぎ。
②【微妙なとこ】おじさんと飲み屋で飲んでる感じ。
③【良いとこ】読みやすい。
①【微妙なとこ】日本をディスりすぎ
本の中で、あまりに日本の教育や日本の子どもがディスられていて、ちょっと気分が悪くなった。
筆者も、デンマークのいいところだけを書いていると「おわりに」で明言していたのだけど。。
気遣いの在り方とか、その社会の文化じゃね?みたいなところがちらほら。
序盤で「最近の若者は・・・」って言われている気分になり、あまり真面目に読む気がしなくなってしまった。がんばって耐えながら最後まで読んだけど。
②【微妙なとこ】おじさんと飲み屋で飲んでる感じ。
データに基づいて、日本の何が良くて&悪くて、だからデンマークのこういうところを取り入れよう!って具体的に書いてくれたらいいのだけど、日本とデンマークの比較もあいまいなまま、デンマークのいいところの主張&日本ディスりが進む・・・。
アマゾンのレビューに、「粗雑な分析と決めつけが気になる」と書いていた人がいたけど、大いに同意。
そうかもしれんけど、主観じゃね?ってつっこみたくなるとこ多々。
内容はおもしろいんだが、物知りおじさんと飲み屋で飲んで話を聞いている感がすごかった。参考書や教科書にはならないなぁと。
③【良いとこ】読みやすい。
①②でボロクソ言ってるけど、逆に言うと、ものすごく読みやすかった。
飲み屋でおじさんの話を聞いている、つまり、難しいことは一切書いていない。難しい表現もない。一瞬で読める。
北欧社会の雰囲気をつかむにはいい本なのかなーと思った。
具体的に印象に残ったデンマーク社会の特徴
①職業と資格(教育)が直結
・例えば、ジャーナリストになるには、ジャーナリストの学位を取らないといけないという風に職業と教育が直結している。しかも、ジャーナリストの仕事も細分化されていて、それに対応する学位/資格を取る必要がある。
②出世がない。
・デンマークでは雇用時に定められた仕事内容で給与が決まる。
・仕事に見合った報酬を得ることが「公平」。
・昇給・出世はない。課長ポストが空いたら外から課長を公募する。
③意外にドライ。
・仕事ができないとあっさり解雇。労働組合は会社ではなく業界で作る。人の横の異動(転職)が多い。
・高校でも、弁当を忘れたら忘れた本人の責任で、ご飯を分けてくれる人はいない。教員もスルー。すべては本人の自立のため。
・学力的に、精神的に習熟していなければ、10年生や留年をすんなりする。追いつこう的なことにはならない(だから塾もない)。
④塾やクラブはないが、お稽古は盛ん
・余暇活動教育と言って、国民が希望すると、公的なおけいこ教室(有料)ができる。ただし、教室できるまで時間がかかる・・・。
気になったこと
①不登校は、善か悪か
デンマークの落ちこぼれ=「登校拒否をするような子供たち」と書いているのだが、別のデンマーク関連の人に話を聞くと、不登校は単なる選択で家庭で教育すればいいし、大した問題ではないと言う。
というか、無理に学校行く必要ないって筆者も書いてるし、なんかそのへんは特に腑に落ちなかった。
②デンマークには、本当に格差はないのか?
この本でもやっぱり、デンマーク社会に格差がないっていってるんだけど、私の友人のデンマーク人は、自分がWorking Classであることをものすごい気にしていて、そんな僕が大学に行くなんて、やっぱり無理なんだといつも落ち込んでいた。
そんな社会が「格差のない社会」なの?っていうのが私の一番の疑問で、この疑問に対する答えを見つけるために、北欧社会の勉強会に行ったり、本を読んだりしている。
答えはまだ見えなかった。
一番考えたこと
他の本を読んでいてもそうなのだが、北欧社会は意外にドライだということがわかってきた。
日本は北欧社会を理想の社会のように言うけれど、はき違えている部分も多いと思う。
割とすぐにリストラされるし、自己責任の社会だし。
なぜか最近北欧社会のあら捜しをしている私は、このへんのこと、もっと知りたいなーと思った。