【番外】「最強の働き方」(東洋経済新報社/ムーギー・キム)書評・雑記
「最強の働き方」(東洋経済新報社/ムーギー・キム)の書評メモ。
概要
世界的企業で働いてきたムーギー・キムさんの自己啓発本。
自己啓発本ながら、上からのエラそうな書き方ではなく、筆者の失敗例を含め、面白おかしく書いている。
教育関連の本ではないけど、お母様(ミセス・パンプキン)の「一流の育て方」(ダイアモンド社)が面白かったのと、ゆるい本が読みたくなったので、たまたま家にあった本書を手に取ってみた。
全体の評価
☆☆★★★
理由:
①【良かったところ】読みやすい。小ネタが面白い
②【微妙なところ】おおむね賛同できるが、目新しい内容がない
③【微妙なところ】エリートとしか接したことがなさそうな人が書いた本
①【良かったところ】読みやすい。小ネタが面白い
この本の良さは、なんといっても読みやすいこと。
自己啓発本なので、難しい話ではないのはもちろんだが、雑誌を読む感じでパラパラ読める気楽な文体で一瞬で読める。
何より、他の自己啓発本より上から目線でないことが良い。新卒のときに自己啓発本よみあさってた時期があったんだけど、その時に読んでた本よりよっぽど参考になる。
あと、たまに挟んでくる小ネタというか、自虐ネタが面白かった…。
…ただ、1冊ぶっ続けで読んでると、その面白さも単調に感じで飽きてくるかな。小分けにして雑誌に載ってるなら毎号たのしく読むんだけどな。
②【微妙なところ】おおむね賛同できるが、目新しい内容がない
本の内容は、おおむね賛同できる。むかし働いてた会社のできる上司(投資銀行出身)ってこんな感じだったなーなんて思いながら読めた。
…が、目から鱗!という内容はなく、まぁそうですよねって内容。
たまに「意識高い系」(「マッキンゼー流」とか好きな人)への皮肉が入ってて、そこはスッキリはしたかな。
③【微妙なところ】エリートとしか接したことがなさそうな人が書いた本
これが、この本の一番の難点。
この筆者、上から目線にならないために、「自分は『一流』じゃないよ!」としきりに主張しているが、一般人から見たら、
あなたも十分『一流』なのよ。
筆者の経歴を見たら、慶応大学やINSEAD卒だったり、UBSやフィディリティで働いてたり、一般人には、それだけで十分。「一流」(筆者)と「超一流」(筆者が言う「一流」)の比較なんて、あんまり自分には関係ないなぁという気持ちになってしまう…。
例えば目についたのは、
・「一流のメールは簡潔」って言うけど、BtoC企業の末端で顧客対応なんかやってみ?クレームとか長々とご説明・謝罪しないと相手満足してくれないよ。。
そりゃあ、金融機関やコンサルみたいな、企業の偉い人と接する仕事であれば、簡潔なメールでいいかもしれないけどさ…。
・「強みと得意なことが被る仕事をせよ」っていうけど、そんなんあれば苦労してへんわーい。
しかも、筆者が言う「強み」って、「才能があり、努力も誰よりもでき、ライバルよりこだわりがあって一流の仕事ができるという」ことらしいんだが、
…普通の人、そんなんあるか?
それでいて、「雲の上の理想ではなく、坂の上の現実をコンセプトに、あらゆるキャリア段階の人に当てはまる…」とか言っているので笑ってしまう。どんだけ世界せまいねん。
◎まとめ:名前をつけると…
「なんかやる気でないなー気楽に笑える本読みたいなー」ってときに、小分けにしてダラダラ読むべき自己啓発本。
「内向的な人こそ強い人」(新潮社/ローリー・ヘルゴー)書評・雑記
「内向的な人こそ強い人」(新潮社/ローリー・ヘルゴー)の書評メモ。
概要
心理学博士であり、心理カウンセラーでもある筆者が描く、「内向的」な人間の取扱説明書。
全米ベストセラーを2014年に翻訳した書籍で、買ったまま忘れてたことに気づき、今さらながら読んでみた。
ちなみに、結構ながくて、2章以降は、興味のある章しか読んでない…(すみません)。
アメリカ社会で内向的人間が如何に虐げられてきたか、内向型人間の取り扱い説明、苦手な場面の対処方法等がよく分かる。
アメリカ社会の対比として、日本と北欧社会が取り上げられてるのがちょっと嬉しい。
全体の評価
☆☆☆★★
理由:
①【微妙なところ】長い割に内容がない
②【微妙なところ】科学的な事実なのか、単なる筆者の思想なのか、区別がつかない
③【良かったところ】内向的な人間は励まされる
①【微妙なところ】長い割に内容がない
この本、長いです。長い割に、収穫がなかった。
でも、収穫がないと感じたのは、日本社会とアメリカ社会の違いゆえかもしれない。
例えば、本書で語られるほど、日本社会では「内向性」に対する誤解はない。「内向的な人がマイノリティというのは誤解で、アメリカでは人口の半分が内向型!」という主張があったが、日本社会で育った私的には、「いや、世の中って普通に内向的な人の方が多くね?」となってしまった。
また、そんなシチュエーションある?と感じてしまった事例も多々。「子ども時代、内向的であるがゆえに、こうディスられて~」みたいな記述も、あんまり共感できなかった。
たぶん、日本社会ではアメリカ社会ほど、内向性に対する誤解ってないんだと思う。というのもあり、導入部分で共感できるポイントが少なく、少ししらけてしまった。(そんで、第一部は2章までしか読めなかった…。)
②【微妙なところ】科学的な事実なのか、単なる筆者の思想なのか、区別がつかない
本のなかでは、内向的な人間の取扱説明書のような記述がたくさんある。私も内向的な人間として、めっちゃうなずきながら読んだ。
でも、それが科学的な事実なのかがよく分からなかった。専門的な心理テストや書籍が引用されている部分は、科学的な事実なんだと確信が持てたのだが、それ以外の部分(大半)、特に事例ベースで語られるところなんかは、どっちなのか分からなかった。
③【良かったところ】内向的な人間は励まされる
良かったところは、内向的で悩んでいる人は、励まされる部分や、抜け道・解決策を本の中から見いだせうる点かな。
私の場合は、本の第三部に記載していた、パーティからの逃げ方とか、仕事の選び方とかが参考になった。
例えば、パーティに参加するのがしんどければ、企画側に回って役割をもらえばよいというのは、大発見だった…(おい)。あとは、社内のコミュニケーションに関して、外交的な人と同じ方法をとる必要はないっていうこともなるほどだった。
◎まとめ:名前をつけると…
難しい話がなくて読みやすいし、内向的で悩んでいる人にとっては何か発見があるだろうけど、何とぞ分量が長いので、ちゃんと読むにはしんどい本。
「モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」」(相良敦子)書評・雑記
相良敦子『モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」』の書評メモ。
本の概要
将棋の藤井聡太さんが受けていたということで、最近ちょっと有名になった「モンテッソーリ教育」をベースにした育児書。
モンテッソーリはどういう考え方なのか、という話を一般向けに分かりやすく解説している。
全体の評価
☆☆★★★
理由:
①【良かったとこ】モンテッソーリの基本的な考え方がわかった
②【微妙なとこ】ちょっと時代が古い
③【微妙なとこ】体系的な話がない
①【良かったとこ】モンテッソーリの基本的な考え方がわかった
イタリアのマリア・モンテッソーリが、どういう経緯でこの教育法を編み出したのか。
モンテッソーリ教育では、子どもの自然な自主性を大切にするということ、そして具体的には、どういうシチュエーションで、子どもとどういう関りをもてばよいか。
本を通して、このあたりについては、非常に理解が深まったように思う。
特に、具体的な取り組み事例も載っているので、現場の人や実践したい人にとっては最適かもしれない。
②【微妙なとこ】ちょっと時代が古い
モンテッソーリが大切にしている考え方は分かったのだが、それが普通の教育とはどう違うのかが、イマイチ最後まで分からなかった。
比較の観点から、進学校や学習塾での学力観との対比はあるものの、この本の内容は25年前の話なので、その学力観の認識が今とはかなり違うように感じた。
例えば、今はゆとり教育を経て、生きる力や非認知能力みたいなものが割と重視される世の中になっているが(入試だってAO入試が4割の世の中だ)、本では、「進学校や学習塾は詰め込むだけの良くない教育です!」みたいな内容で、ハイパーメリトクラシー化している現代社会とは少し認識のずれがあるように思った。
しかも、今や詰め込み教育はモンテッソーリと比較しなくても、よくない教育だというのは皆わかっていることであって、そこに新しさを見いだせなかった。
あと、時代認識で言うと、オカンは子どもにじっくり手料理作るべきだ!みたいな記述もあって、ちょっとイラっとしてしまった。できるならみんなやっとるわ!というか。
本の中の古い常識(価値観)に、ちょっとイラっとしてしまう若い読者は多かろうと思った。
(端的に言うと、モンテッソーリでないものに対して、著者がちょっと説教くさいのよね…)
③【微妙なとこ】体系的な話がない
筆者の相良さんは、パリのカトリック大学でモンテッソーリを学び、九州大学教育学研究科を修了されているらしいので、学術的なバックグラウンドはある方なんだと思うのだが、意外に本には体系的な話が書いてなかった。
たぶん一般向けだからかな?
特に、脳科学に関する記述は結構あてにならないもので、ご自身もあとがきで「脳科学については素人で、誤った記述があった」ということは書いていらっしゃった。
だからこそなのか、モンテッソーリが宗教的なもののように感じてしまった。
データやエビデンスもなく、個々人の都合の良い事例を集めた宗教本のような感じというか。。
もう少し科学的に、体系的にモンテッソーリを知りたかったというのが残念なところだった。
まとめると
初心者で、まずはゆるく勉強したい、というモンテッソーリ教育者・親にはちょうどいいかも。
ただ、やや内容が古いので、もう少し現代社会に即した内容の本は他にあるような気もする。
◎名前を付けると
「モンテッソーリ教育の考え方をやさしく教えてくれるけど、ちょっと時代認識が古くて付いていけない人も多いかもしれない本」
「消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法」(大嶋 信頼)書評・雑記
大嶋 信頼「消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法」の書評メモ。
本の概要
カリスマ心理カウンセラーの大嶋信頼さんの本。
嫉妬や劣等感が起こる仕組みや、解消法について概説する内容。
30代にもなると、キャリアなんかでも他人に嫉妬することが増えてきて、もやもやしてたので手に取ってみた。
全体の評価
☆☆★★★
理由:
①【良かったとこ】嫉妬が起きている心の中を整理してくれている
②【微妙なとこ】3章以降、急に見失う…
③【微妙なとこ】自己啓発本>専門書
①【良かったとこ】嫉妬が起きている心の中を整理してくれている
2章くらいまで面白かった。
特に、嫉妬が起きてる時の自分の心の中を整理してくれる感じがよかった。
いくつかの事例も「あーわかるー!こういうとき嫉妬するわー!」みたいに共感したし、「これって私だけじゃないんだ」と思えて心が軽くなった。
嫉妬ってネガティブな感情だから、嫉妬している自分に気づくと、さらに自己嫌悪に陥るんよね…(こういう話も本書にあったな)。
②【微妙なとこ】3章以降、急に見失う…
2章まで、うなずきながら読んでいたのだけど、3章のミラーニューロンの話あたりから、急に話が分からなくなった。
「嫉妬は移る」という話は、理論的な説明があまりなく、腑に落ちず…。
あと、このあたりから、あらゆるネガティブな感情を「嫉妬」と呼んでいるところに混乱した。「いや、それは違う気持ちじゃないか?」と。。
(この書評ですら、「嫉妬だ」と言われそうだ・・・)
たぶん、定義や理論の話はそこそこに、嫉妬の解決法をアホでも分かるように、抽象的に書いてくれてるのが逆に理解しにくくなっている気がする。
③【微妙なとこ】自己啓発本>専門書
もう少し理論的な説明をしてくれる本を求めていたので、星3つにしたけど、自己啓発本としては、めっちゃ励まされた。
いかに嫉妬や劣等感といったマイナスな感情が無意味かということに気づかされた。
落ち込んでるときにこの本を読むのは、なかなか良いと思う。
まとめると
読むうちに嫉妬の感情は消え失せたし、励まされたし、さくっと読める本だったので、それはそれで良かった。
ただ、嫉妬に関する理論的な説明を求める人は、大学教授とかが書いた他の専門的な本の方が良いと思う。(この作者さんは、「カリスマ心理カウンセラー」なんだよね…)
なんか良い本ないかなぁ…
◎名前をつけると…
「嫉妬の発作が"ビビビッ"と来たときに読んだら、嫉妬の感情を持つことが全く無意味だとサクッと教えてくれる本」
「格差社会幻想論」への違和感 ~『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』(書評・雑記)②~
『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』の書評メモ。
今回は、筆者の「格差社会幻想論」に対して感じたことを書きたい。
【参考】前回の記事はこちら↓
「格差社会幻想論」
筆者は、以下の理由で日本は努力が報われる時代だし、国であるという。
①日本には階級がない
②ジニ係数がアメリカより低い。感覚としてアメリカより流動性が高い
③自分も実家が200万円を切る時期があったが大学院まで行けた
特に日本には「教育格差」はなく、以下のような理由で経済格差は「発想力の差」だと。
「発想が貧困な人ほど学歴や血筋や親の財産が必要」とまで言っている。怖い。
①日本ほどローコストでよい教育を得られる国はない
②年功序列が薄れ、学歴も意味がなくなってきている
③ワーキングプアの人は「雇用される」という発想が良くない、起業すればいい。もっと既存の構造を利用して工夫しろ。人のせいにすんな。
④世代間格差はあるが、現在は昔に比べると豊かな時代。
1.「日本は経済格差が少ない」という違和感
この「格差社会幻想論」を読んで抱いた違和感を言葉にしてみたいと思う。
まず、経済格差の部分について。
①日本には階級がない
この点は、その通りだと思う。私も欧州にちょっといたので何となくわかる。
それでも、日本の生活保護世帯の4分の1は親の時代も生活保護世帯だったという調査もある。階級はなくても、社会経済的ステータスの固定化は、少なからず起きているんじゃないかと思う。
②ジニ係数がアメリカより低い。感覚としてアメリカより流動性が高い
が、なぜここでアメリカを出したのか。。
ジニで言うなら、日本はOECD(先進国)平均より高いということの方が問題だと思うのだが。
また、この本では、世界のジニを載せて、「世界的に見れば、日本の格差は大したことない」と書いている。
しかし、世界の多くは途上国なわけで、途上国と日本を比較するのはどうなのかと思った。(理論に賛否はあるが、発展の段階として格差が広がるという経済学の理論があったような。)
③自分も実家が200万円を切る時期があったが大学院まで行けた
うーん、脳科学どこ行った。
そもそもこの人は奨学金もらえたからよかったけど、その陰には、もらえない人もいるのよね。
(某NPOでは応募者の多さに対して、支援金が追い付いていないと言っている)
2.「日本は教育格差がない、あるのは発想力の格差」という違和感
次に教育格差について。
筆者は教育格差のデータは幻想だ!と言っているので何を出しても無駄だと思うが、一応載せておこう・・・
①日本ほどローコストでよい教育を得られる国はない
日本の教育の質の高さはPISAでも示されているが、根拠をもうちょっと具体的に示してほしいと思った。
おつりの計算がうんぬんとかでなく。
②年功序列が薄れ、学歴も意味がなくなってきている
確かに年功序列でない会社も多くなっているけど、どれほどなのかデータが示されていない。
そして学歴も、最近意味はなくなりつつあるかもしれない。
とはいえ、高卒と大卒の生涯賃金を比較すると、高卒では1億9240万円、大卒では2億5440万円となっている。
※ただし、高卒と大卒の生涯賃金を企業規模別に分類すると、企業規模によって逆転するので、正確にいうとそこを勘案する必要もあるけどね。
③ワーキングプアの人は「雇用される」という発想が良くない、起業すればいい。もっと既存の構造を利用して工夫しろ。人のせいにすんな。
ホリエモンの例を挙げられましても・・・と思ったのは私だけだろうか。
ふだん色んな事情をかかえた家庭と接している私とは世界が違いすぎてしっくりこねぇ。
④世代間格差はあるが、現在は昔に比べると豊かな時代。
そもそもなんだけど、この人が言っている、日本の「貧困」というのは「相対的貧困」という視点がないんだろうなと思った。
飢えている人はいないけど、「みんなができる『現在』の当たり前の生活ができない」家庭は結構あるわけで。
子どもの相対的貧困の話だけど以下ご参照。
それでも、私はこういう論者は必要だと思う。
これまで散々文句?を書いたけど、こういう「格差社会幻想論」を唱える人は必要だと思う。
だって、当事者に夢を与えてくれるから。
私もそうだけど、「ステレオタイプの脅威」に苦しまされて、身動きができなくなっている人は少なくない。
でも、こういう成功者があなたもできるよ!と言ってくれるのは、とても心強いのだ。
子どもたちが格差を感じないで、自分の可能性を信じられるように、【こっそりと】社会がサポートできるといいのになぁ。
長くなったので、実験やサイエンスについての面白かったところはまた次回。
『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』(書評・雑記)①
『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』の書評メモ。
本の概要
日本人って「努力」大好きだけど、それってちょっと違うくない?という内容。
本では「努力が不要」ではなく、正しくは、「努力は大切だけど、正しい努力が必要だよね」っていうことでした。
全体の評価
☆☆☆★★
理由:
①【微妙だったとこ】Amazonのワナにはまった
②【微妙だったとこ】自己啓発本>専門書
③【良いとこ】自己啓発本としてはいいかも
①【微妙だったとこ】Amazonのワナにはまった
最近、脳科学の本を読んで、興味をもったので、関係してそうな本を読みたいなと思っていた。
そんなときに、AmazonのKindleさんがこちらの本を紹介してくださった。
そしたら、②にもつながるけど、期待していた内容と違うかった・・・。
最初の数ページの試し読みではおもしろそうだったのだけど。これからはもうちょっと吟味してから買おうという教訓を得た。
※これは筆者のせいではない。
②【微妙だったとこ】自己啓発本>専門書
今回、私が期待していたのは、脳科学のデータを用いて論理的に努力は本当に必要なのかを示した本。
・・・が、実際は、中野信子さんという成功者による自己啓発本だった。
というのも、科学的な話はほとんど出てこない(特に中盤~後半)。筆者の経験による考え:科学的要素=7:3くらいか。
しかも、わたしがおバカさんなのかもしれないけど、筆者の書いていることにあまり説得力がないし、ところどころ主張がブレているように思う。
Amazonのレビューにも「エビデンス不足、思い込みの激しさ、認識が古い、自分の限られた範囲の理解での決めつけ、などなど、とても学者、しかもサイエンティストの著作とは思えません。」と書いてあったのだが、おおむね同意。
でも、これは私の下調べがなかったのが悪かった。筆者は脳科学者ではなく、タレントさんだった。経歴に研究機関の名前やドクターの学位があったから、すっかり研究者なのだと思っていた。
しかも、あとがきに「専門書でなくて、社会に問題を投げかけるような内容にしようと思って書いた」って書いてあった・・・。はじめにに書いてほしかった・・・。
③【良いとこ】自己啓発本としてはいいかも
とはいえ、この本は、自己啓発本としてはいいかもしれない。Amazonのレビューも低くないし、読んで励まされる人もいるんじゃないかな?
特に、「格差社会幻想論」にはいろいろ考させられたので、次回きちんと書きたいと思う。
▼続き。
「格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり」を読んで【書評・雑記】
千葉忠夫さんの著書「格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり」(PHP新書)の書評メモ。
本の概要
格差が小さく、世界一幸せな国と言われるデンマーク。
そんなデンマーク社会の教育と労働のお話が中心に書いてある本。
著者の千葉忠夫さんという方は、デンマークで学校を開いている方だそう。
全体の評価
☆☆☆★★
理由:
①【微妙なとこ】日本をディスりすぎ。
②【微妙なとこ】おじさんと飲み屋で飲んでる感じ。
③【良いとこ】読みやすい。
①【微妙なとこ】日本をディスりすぎ
本の中で、あまりに日本の教育や日本の子どもがディスられていて、ちょっと気分が悪くなった。
筆者も、デンマークのいいところだけを書いていると「おわりに」で明言していたのだけど。。
気遣いの在り方とか、その社会の文化じゃね?みたいなところがちらほら。
序盤で「最近の若者は・・・」って言われている気分になり、あまり真面目に読む気がしなくなってしまった。がんばって耐えながら最後まで読んだけど。
②【微妙なとこ】おじさんと飲み屋で飲んでる感じ。
データに基づいて、日本の何が良くて&悪くて、だからデンマークのこういうところを取り入れよう!って具体的に書いてくれたらいいのだけど、日本とデンマークの比較もあいまいなまま、デンマークのいいところの主張&日本ディスりが進む・・・。
アマゾンのレビューに、「粗雑な分析と決めつけが気になる」と書いていた人がいたけど、大いに同意。
そうかもしれんけど、主観じゃね?ってつっこみたくなるとこ多々。
内容はおもしろいんだが、物知りおじさんと飲み屋で飲んで話を聞いている感がすごかった。参考書や教科書にはならないなぁと。
③【良いとこ】読みやすい。
①②でボロクソ言ってるけど、逆に言うと、ものすごく読みやすかった。
飲み屋でおじさんの話を聞いている、つまり、難しいことは一切書いていない。難しい表現もない。一瞬で読める。
北欧社会の雰囲気をつかむにはいい本なのかなーと思った。
具体的に印象に残ったデンマーク社会の特徴
①職業と資格(教育)が直結
・例えば、ジャーナリストになるには、ジャーナリストの学位を取らないといけないという風に職業と教育が直結している。しかも、ジャーナリストの仕事も細分化されていて、それに対応する学位/資格を取る必要がある。
②出世がない。
・デンマークでは雇用時に定められた仕事内容で給与が決まる。
・仕事に見合った報酬を得ることが「公平」。
・昇給・出世はない。課長ポストが空いたら外から課長を公募する。
③意外にドライ。
・仕事ができないとあっさり解雇。労働組合は会社ではなく業界で作る。人の横の異動(転職)が多い。
・高校でも、弁当を忘れたら忘れた本人の責任で、ご飯を分けてくれる人はいない。教員もスルー。すべては本人の自立のため。
・学力的に、精神的に習熟していなければ、10年生や留年をすんなりする。追いつこう的なことにはならない(だから塾もない)。
④塾やクラブはないが、お稽古は盛ん
・余暇活動教育と言って、国民が希望すると、公的なおけいこ教室(有料)ができる。ただし、教室できるまで時間がかかる・・・。
気になったこと
①不登校は、善か悪か
デンマークの落ちこぼれ=「登校拒否をするような子供たち」と書いているのだが、別のデンマーク関連の人に話を聞くと、不登校は単なる選択で家庭で教育すればいいし、大した問題ではないと言う。
というか、無理に学校行く必要ないって筆者も書いてるし、なんかそのへんは特に腑に落ちなかった。
②デンマークには、本当に格差はないのか?
この本でもやっぱり、デンマーク社会に格差がないっていってるんだけど、私の友人のデンマーク人は、自分がWorking Classであることをものすごい気にしていて、そんな僕が大学に行くなんて、やっぱり無理なんだといつも落ち込んでいた。
そんな社会が「格差のない社会」なの?っていうのが私の一番の疑問で、この疑問に対する答えを見つけるために、北欧社会の勉強会に行ったり、本を読んだりしている。
答えはまだ見えなかった。
一番考えたこと
他の本を読んでいてもそうなのだが、北欧社会は意外にドライだということがわかってきた。
日本は北欧社会を理想の社会のように言うけれど、はき違えている部分も多いと思う。
割とすぐにリストラされるし、自己責任の社会だし。
なぜか最近北欧社会のあら捜しをしている私は、このへんのこと、もっと知りたいなーと思った。